■「冬ソナ」ブーム - ⑤ -

5)ユン・ソクホ監督の考え方

 

2003年12月にNHKは再びBSで「冬のソナタ」を再放送した。しかも一日2話ずつ、合計で10日間の集中放送だった。なぜ、NHKは「冬のソナタ」を再放送したのかだが、それは「冬のソナタ」を見た視聴者から予想をはるかに超えた反応があったからである。

 

「冬ソナ」って面白いから、一度は見てみなよ。そんなふうに友人から勧められた人が、この再放送を通してこの噂の韓国ドラマを実際に見ることができたのだ。大人の女性たちの口コミの影響力は非常に強い。

 

「冬ソナ」を通して韓国ドラマの認知度は一気にスパークした。そこに新しいマーケットも生まれた。まずは韓国ドラマを扱った雑誌、書籍が出版され た。売れ行きも好調で、「好きな韓国人俳優(チャン・ドンゴン、ウォンビン、イ・ビョンホンなど)の載っている雑誌や本を立ち読みで済ませるわけにはいか ない」という気持ちも強く働いたのであろう。

 

また、音楽業界でも「東方神起」から始まり、最近は「少女時代」や「KARA」などの女性グループ歌手が日本のメインストリームまで広がっている。

 

インターネットを見て、いつも柔和な微笑みを浮かべているユン・ソクホ監督は、トレードマークのハンチング帽をかぶり、大きめの眼鏡をかけている。

 

彼自身はソウル生まれだが、農業学校に通っていたようだ。なので自然に対するあこがれが強くなったのもうなづける。

 

まずは、テレビドラマの演出家から評価され、四季や自然を背景にしたドラマが作りたかったようだ。彼の考え方は、「人間は自然の一部であり、自然の中にいることにより純粋な感情を持つことができる」

 

「私は個人的に、リアリティよりファンタジーを優先したいんです。配役を決める時も現実より夢を見ているときのような雰囲気を大切にしたいと思いま す。ペ・ヨンジュン氏とチェ・ジウさんにはそんなイメージがあり、他の俳優にはない神秘性を備えていました。なにより二人は本当にマッチするんですよ。現 実でもすばらしいカップルのようにね」

 

言葉がなくても以心伝心する部分もあるが、それはよほど相手と波長が合う時であり、正確に相手を理解しようと思ったら、やはり言葉の力を借りなければならない。

 

その言葉の強さが「冬ソナ」には満ちていた。美しい映像作品でありながら、詩集のような文学性もあった。

 

とにかく、「冬のソナタ」には名セリフが多く、それは名詩にもたとえられるものだった。

 

しかも、ストレートでわかりやすい言葉が、ストーリーの流れの中で輝く色彩を放っている。映像が美しいのはもちろんだが、それ以上に言葉がどんどん見る人の心に入ってきた。むしろ、映像の美しさ以上に言葉の方が「冬ソナ」には効いている。

 

ちなみに、ユン・ソクホ監督が「冬ソナ」の中で一番好きなセリフは、「愛し合う二人にとっては、お互いの心が一番いい家です」だという。

 

「外見だけでなく、心が一番重要だという意味で、このセリフが一番気にいっています」そうインターネットのインタビューで答えるユン・ソクホ監督 は、「今の韓国はグローバル化などで変化が激しく、お互い競争がなくては生きていけないような感じがします。そんな状況の中で強くて刺激的な内容が好まれ ます。つまり、最近の韓国ドラマは暴力的なストーリーが好まれていますが、私は基本的に優しいドラマを作りたいのです。

 

ユン・ソクホ監督は、ドラマの中に常に「優しい心」を置く。それが見る人を癒すのである。

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